結婚式当日、自分がちゃんと動けるか不安な人へ。覚えることは、ほとんどありません
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お打ち合わせが進むほど、決めることが増えていきます。ご入場して、乾杯して、ケーキを切って、中座して、お色直しをして、キャンドルを回って、手紙を読んで、謝辞を述べて、ご退場する。
書き出された進行表をご覧になって、こう思われた方へ書いています。
「これ、当日ちゃんとできるだろうか」
順番を覚えられる気がしない。立つ位置もわからない。大勢に見られながら、変な動きをして恥をかいてしまったら。緊張で頭が真っ白になってしまったら。
私はホテルの宴会サービス課で、会場責任者として披露宴を回しておりました。当日、新郎様の横に立っていた人間です。
先に、結論からお伝えします。
その不安は、抱えたままにしなくて大丈夫です
不安に思われるお気持ちは、よく分かります。ただ、心配していただく場所が、少しだけ違うのではないかと思っております。
当日、お二人にしていただくことは、段取りを思い出すことではありません。そのときどきで、横からお声がけいたします。それに沿って動いていただければ、それで進みます。
頭が真っ白になってしまっても、心配はいりません。私も介添えも、そうなる前提で横に立っております。
「一礼をお願いいたします」
このタイミングで、後ろからそっとお声をかけます。お二人はそれに合わせて一礼される。それで場は整います。思い出していただく必要は、ありません。
お声がけが間に合わないところは、手でお直しします。立ち位置がずれていても、手の位置が違っていても、キャプテンと介添えがさっと直しております。 直されたことに、ご本人が気づかれないことも多いと思います。
「覚えられなかったらどうしよう」というご不安は、覚えることが前提になっています。ただ現場は、お二人が覚えていらっしゃらない前提で作られております。
ケーキ入刀の30秒に、何が起きているか
抽象的な話になってしまいますので、実際の場面をひとつ、そのままお見せします。
披露宴でいちばん写真を撮られる場面、ケーキ入刀です。ご列席の方から見ると、お二人がすっと立ち上がり、ケーキの前に並び、ナイフを持って、笑顔で入刀されている。簡単そうに、自然に見えていると思います。
その裏では、こう動いております。
司会者が話し始めます。 「これよりお二人による、初めての共同作業……」。ご列席の方の意識が、その言葉のほうへ向きます。
このご説明が続いている間に、私が動きます。 新郎様にお声をかけ、適切な場所まで移動をお願いする。介添えが新婦様を同じようにご誘導する。
ナイフをお持ちいただきます。 どちらの手で、どの位置を持つのか。これも横からお伝えします。
立ち位置と手の位置を、さっと直します。 お二人の間隔、体の向き、ナイフを持つ手の高さ。言葉でお伝えして間に合わないところは、そのまま手で整えます。写真とビデオに残る場面ですので、ここは秒単位です。
入刀の合図と同時に、動かし方をお伝えします。 どのくらいの角度で、どこに向かって、どのくらいの速さで下ろすのか。きれいに残る形になるよう、横から言葉でお伝えします。
お二人は、それを聞いてそのとおりに動かれるだけです。
そして、ご列席の方からは何の違和感もありません。
目は、お二人のほうを見ていらっしゃるかもしれません。それでも気づかれないのは、声に集まるのは視線ではなく、意識だからです。司会者の言葉に意識が向いている数十秒のあいだ、こちらの動きは背景に沈みます。
ですから「お二人が自然になさっている」ようにしか見えません。
これが、披露宴のほぼすべての場面で行われております。ご入場も、乾杯も、中座も、ご退場も、同じです。
いま不安に思っていらっしゃる「自分でうまくやる」は、もともとお二人に求められているものではないのです。
だから、披露宴の動線確認はありません
これは知っておいていただくと、かえって安心できると思います。
挙式のリハーサルはあります。ただ、私のいた会場では、神前式の動線確認や、披露宴の動線確認は行っておりませんでした。
「練習しないまま本番なんて」と思われるかもしれません。ただ、順序が逆なのです。
練習が要らないから、やっていないのです。
当日その場ですべてお伝えしますので、事前に体で覚えていただく必要がありません。お二人が練習しなくても進むように組み立てるところまでが、会場側の仕事だと考えております。
覚えているのは会場の側です。当日その会場を回す責任者は、前日の夜のうちに進行を頭へ入れています。どなたがどこに座られ、どなたが挨拶に立たれ、どこで音が入るのか。それが入っているから、その場でご誘導できます。
リハーサルが無いことは、手抜きのしるしではありません。
ひとつだけ、ご用意いただきたいもの
ここまで「何も要りません」と書いてまいりましたが、ひとつだけあります。
新郎様の謝辞のカンペです。
謝辞は、飛びます。実際に飛んでしまわれる方がいらっしゃいます。ここまでの流れとは違って、謝辞だけは、横から代わりにお話しすることができません。 内容がご本人のものだからです。
ですので、紙をご用意ください。読まない前提で構いません。 ポケットに入っている、それだけで違います。
「カンペを見るのはかっこ悪い」と思われるかもしれませんが、ご列席の方は、どなたも気にしていらっしゃいません。 詰まって沈黙が続くほうが、見ている側はつらいものです。読み上げられても、式は何も損なわれません。
崩れてしまってよい場面もあります
「ちゃんと動けるか」というご不安の裏には、崩れてはいけないという思い込みがあるように思います。
これは、外していただいて大丈夫です。
新婦様のお手紙で、ボロボロになって読めなくなる方がいらっしゃいます。声が出なくなって、しばらく止まってしまう。
あれは、良い場面です。
現場で何度も拝見してきましたが、止まって困ったことは一度もありません。会場は待ちます。ご列席の方も待ってくださいます。読めないまま終わられても、その式は成立します。
段取りどおりに進むことが、良い式の条件ではないと思っております。
ひとつだけ、進行が難しくなるもの
正直に書いておきます。
お子様が参加される趣旨の演出は、進行が難しくなる場面があります。リングボーイやリングガール、花束をお渡しする役といったものです。
理由は単純で、お子様にはお声がけによるご誘導が効かないからです。歩かない、泣く、走り出す。こちらから動かすことができません。
おやめになったほうがいい、という話ではありません。 ご家族にとって大切な場面になることも多いと思います。ただ、予定どおりに運ばない可能性がある演出だという前提だけは、持っておいていただければと思います。
お打ち合わせのときに「もし動かなかったら、どうなりますか」と一言お尋ねになっておくと、当日のお気持ちが変わります。
見学と打ち合わせで確認すること
ご不安の向け先を、ご自身の記憶力から会場の体制へ移していただければと思います。そのままお尋ねいただける形にしておきます。
- 当日、私たち二人には、それぞれどなたがついてくださいますか。
- 入場やケーキ入刀のとき、その場で動きを教えていただけますか。
- 披露宴の動線確認やリハーサルは、当日ありますか。(無いというお答えは、悪いお答えではありません)
- 子供が参加する演出を考えていますが、動かなかった場合はどうなりますか。
ご覧いただきたいのは、お答えの内容よりも具体さです。「大丈夫ですよ、ご安心ください」は、お気持ちに寄り添ってくださっているお返事です。そのうえで、「ご入場のときは、扉の前で係の者が合図を出します」のように、場面と担当者が見えるお答えまで伺えると、当日の景色が想像しやすくなると思います。
その場でお答えが出なくても、持ち帰って調べて、後日きちんとご連絡が返ってくるなら問題ありません。返ってこない質問は、当日も同じ扱いになりやすいところです。
覚えていただくことは、ほとんどありません。順番も、立ち位置も、手の動かし方も、その場で横からお伝えします。当日お二人にいちばんうまくやっていただきたいことは、段取りを思い出すことではないと思っております。
祝ってもらえるその日、その空間を、思いっきり噛みしめて楽しんでください。
会場の人間は、そのために立っております。