高砂や装花にかけたお金は、本当に見られているのか。会場を回していた人間から見えていたこと
見積もりの装花の欄をご覧になって、こう思われた方に向けて書いています。
「ここまでかける意味が、本当にあるのだろうか」
高砂の後ろの装花。各テーブルの花。金額が並んでいるのを見ると、ふと現実に戻る瞬間があると思います。当日は誰もが料理と会話に夢中で、花などほとんど見ていないのではないか。数時間で終わるものに、これだけかけるのか。
私はホテルの宴会サービス課で、会場責任者として披露宴を回しておりました。無線でフロア全体の様子を見ながら、その日一日の会場を預かる役です。
ご列席の方が、どこを見ていらっしゃるか。 そこはずっと見ておりました。実際に見えていたことをお伝えします。
高砂は、見られています
先に、いちばん大事なところをお伝えします。
歓談中を除けば、基本的にご列席の視線は高砂に向いています。
考えてみれば当然かもしれません。ご入場、乾杯のご挨拶、ケーキ入刀、スピーチ、余興、お手紙、謝辞。進行のほとんどは、高砂を向いて行われます。 その間ずっと、高砂とその背後が、会場の正面として見られ続けています。
「誰も見ていないのではないか」というご心配は、ここについては当たっていないと思います。むしろ披露宴のあいだ、いちばん長く見られている場所です。
視線が散るのは歓談中です。お食事とお話に意識が向く時間帯なので、そこは高砂から離れます。ただ、それは高砂に価値がないという話ではなく、時間帯によって役割が変わるということだと思っております。
テーブルの装花は、届く方と届かない方がいらっしゃいます
こちらは、正直に書きます。
テーブル装花にどれだけ意識が向くかは、ご列席の方によってはっきり差がありました。
まったく気に留めていらっしゃらない方もいれば、着席してすぐ花に触れて、写真を撮って、隣の方と話し始める方もいらっしゃいます。私が見ていた範囲では、男性より女性のほうが、その辺りの意識が強いという傾向がありました。
ですから、テーブル装花は「全員に届くもの」ではありません。届く方にはしっかり届き、届かない方には届かない、という性質のものです。
ご列席の顔ぶれを思い浮かべながら、どのくらいの方に届きそうかを考えていただくのが、判断としては現実的かもしれません。
そして、記録には残ります
もうひとつ、その場だけの話ではない側面があります。
私が撮影の側で会場に入るときは、進行に合わせて新郎新婦様を中心にお撮りします。 そしてお色直しなどでお二人が中座されている間に、会場のほうを撮ります。
つまり、こうなります。
- 高砂の装花は、お二人を撮っている時間ずっと、背景として写り続けます
- テーブル装花は、お二人が中座されている間に撮られる会場の画に入ります
その日いらしていない方が、あとから写真やビデオをご覧になることもあります。ご親族に配られることもあります。その場で見られたかどうかだけが、装花の価値ではないということです。
では、どこを削ればいいのか
ここが、私がいちばんお伝えしたいところです。
現場にいた人間として、「ここを削れば大丈夫です」と言える場所が、正直に申し上げて思い浮かびません。
料理にしても衣装にしても、それぞれコースや区分があって、いちばん下より下は、そもそも用意されていないからです。削るという発想で見積もりに向かうと、選べる幅が思ったより狭いことに気づかれると思います。
では打つ手がないのかというと、そうではありません。同じ金額でも、配り方で見え方が変わります。
同じ予算で、豪華に見えた頼み方
実際にあった話を、そのままお伝えします。
私がおりましたホテルでは、お料理を和食・洋食・和洋食からお選びいただけました。和洋食を選ばれた場合、1万円、1万2千円、1万5千円の3つのコースがありました。
そして、コースとは別にオプションがあります。たとえばお刺身の盛り合わせは、1卓あたり1万円から2万円ほどでした。
このとき、こういうことが起きます。
1万5千円のコースよりも、1万2千円のコース+お刺身の盛り合わせ。 こちらのほうが、豪華に感じていただけたと思います。
一人ずつお出しするコース料理は、金額が上がっても、お皿の上の違いがご列席の方に伝わりにくいところがあります。一方で、卓の真ん中に大皿が届くと、その卓の景色そのものが変わります。
金額を上げることと、豪華に見えることは、同じではありません。
ここが、装花のご心配に対する私からのお答えです。「かけても見られていないのではないか」ではなく、「同じ額を、どう配れば届くのか」。そちらで考えていただくほうが、実りがあると思っております。
⚠️ 金額は、私がおりました当時のホテルのものです。会場によっても、時期によっても変わります。 ご自身の見積もりの数字に置き換えてご覧ください。考え方のほうを持ち帰っていただければと思います。
演出は、新しさで効きが変わります
もうひとつ、時代による部分があります。
真新しい演出は、よく響きます。 一方で、どこかで見たことがあるものだと、効果は薄れます。同じ演出でも、5年前と今とでは受け取られ方が違います。
ただ、ここを追いかけ続けるのは大変です。新しさは、いつか新しくなくなるからです。
その点、お料理の配り方は、流行に左右されません。 卓の真ん中に大皿が届いたときの景色は、いつの時代でも変わらないと思っております。どちらに力を入れるかを決めるとき、この違いは判断材料になると思います。
打ち合わせで聞けること
そのままお尋ねいただける形にしておきます。
- コースとは別に、卓ごとに足せるお料理はありますか。金額はどのくらいですか。
- 一つ下のコースにして、その分を卓の大皿に回すことはできますか。
- 高砂の装花は、写真やビデオにどのくらい写りますか。
- テーブル装花は、どのあたりまで小さくできますか。
2番は、会場によってはお受けできないこともあります。断られたとしても、それは不誠実な対応ではありません。 仕入れや配膳の都合で組み替えが難しい場合があるためです。そのときは理由を伺って、別の配り方を一緒に考えていただくのがよいと思います。
高砂は、見られています。装花も、届く方には届きます。写真とビデオには、その日いらっしゃらなかった方の分まで残ります。
そのうえで、限られた予算をどこに置くか。削る場所を探すより、同じ額の配り方を変えるほうが、当日の景色は動きます。
お二人が一日をかけてお迎えする方々に、どう見えていてほしいか。そこから逆算していただければと思います。